危険な愛を抱きしめて
「現在、九条家は、ちょっとした騒動に巻き込まれておりまして……
 何の罪も無いアヤネさまを狙う不届き者も多いのです」

 坂田は、そういってオレの手を握らんばかりに近づいてきた。

「もちろん。
 学校への行き帰りをはじめ、ほとんどすべての外出には。
 信頼のおける者が、車でアヤネさまを送り迎えしているのですが……」

 言って坂田は、ため息をついた。

「今日のこの時のように、アヤネさま自ら姿を消してしまわれると……
 私どもにはなんとも、お守りできません」

 ちらっと、恨みがましい目で眺める坂田に、アヤネは舌を突き出した。

「だって、窮屈なんだもん!
 久しぶりに、音雪と一緒に帰りたかったんだもん!」

 ……アヤネ。

 あんたの家は「ちょっとしたいざこざ」で、ヤクザに囲まれるのか?

 何をしているんだか……は、巻き込まれたくないので、訊かねぇが。

「……アヤネ。
 迎えに来てもらって良かったな。
 今日は、もう車で帰れ」

「………ヤよ」

 アヤネは、ぷう、と頬をふくらませた。



 

< 25 / 368 >

この作品をシェア

pagetop