危険な愛を抱きしめて
「それより……あんたは、元は、男だろ?
 これから、女客相手に商売をしようっていうのに、なんで女のカッコをしてるんだ?」

 見たところ、ショコラの顔の造りは、悪くねぇ。

 男のカッコでも、十分。

 自分自身に人気が出そうなのに。

 オレの質問に、ショコラは、ちょっと目を伏せた。

「……それは、もちろん……
 私は、男が好きだからよ」

「……え?」

「私が、好きになるヒトってば。
 毎回、必ず、男のヒト……しかも、普通に女のヒトが好きなヒトばかりでねっ!
 ……男のカッコじゃ、恋が出来ないの!」

 ショコラは、勢い良く、笑って言ったけれど。

 その瞳は、やけに、悲しそうだった。

 その。

 女のカッコをしてまで手に入れようとした恋は。

 ……ちゃんと、成就したんだろうか?

「ショコラ……」

「そんな顔、しないの!
 ま、恋なんて、上手くいくかどうか、なんて。
 バッチリ努力したら、あとは運次第だし。
 私は、結局……。
 男のヒトに抱かれるのが好きなだけかもしれないから。
 雪ちゃんには、判んないかもしれないけどね」

 
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