危険な愛を抱きしめて
 ココロなしか。

 だんだんと迫ってくるような、ショコラに。

 オレは、背筋をぞくぞくさせて、今座っている場所から、一歩、後退した。

「……悪りぃが、遠慮する。
 オレには、今、好きなヤツがいて……!」

「その、キス・マークをつけたヒト?」

「違う!!」

 全身で叫んだオレに。

 ショコラは、優しげに、ふ、と微笑んだ。

「……もしかして、雪ちゃんは、それで凹んでいたの?
 誰を抱いても……抱かれても。
 遊びだって、割り切っちゃったら、大したコトないのにね?」

 とても。

 とても、この時のオレは、そんな風に割り切るなんて、できなかった。

 むやみにクビを振るオレに、ダメ押しのように。

 ショコラは近づいて言った。

「もちろん、私だって……誰でも、やたらにさせるワケじゃないわよ?
 これでも、好みには、うるさいの」

 ショコラは、妖しく微笑んだ。

「……ねぇ、雪ちゃん。
 きみは、一目惚れって、信じる……?」

 そう言うショコラの目がマジだ。

 冗談じゃねぇ!

 オレの背筋も最高潮に寒くなり……

 思わず、つぶやいた。






「……ぞくぞくするぜ」

 
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