危険な愛を抱きしめて
 
 十二月二十六日……!?


 一瞬見間違いかと思って、オレは携帯を意味なくひっくり返し……もう一度。

 日付と、時刻を大写しにした待ち受け画面を見直した。

 間違いねぇ。

 オレは、丸一日、ここで眠っていたんだ!

 昨日、一年で二番目か、三番目に忙しいはずのクリスマスだったのに、オレは。

 眠りこけて、無断欠勤してしまったんだ……!

 あわてて、この時間には、開店準備をしているはずの風ノ塚に。

 連絡をとろうと、ケーキ屋の番号を押そうとしたら。

 オレの携帯の電源が入るのを待ってたかのように、電話が鳴った。

 ……ウチの使用人頭の町谷からだ。

 そのまま、ワンコールで出ると。

 妙な緊張感のある、今まで聞いたことのない町谷の声が、飛び込んできた。

『坊っちゃん!? 坊っちゃんですよね!?
 ご無事ですか!?』

「……ああ」

 無断外泊を心配するには、切羽詰まった声色に戸惑いながら。

 腫れた喉で、無理やり声を出せば。

 町谷は、ほっとしたように、叫んだ。

『……ああ、やっとつながった……!
 今、どちらにいらっしゃるんですか!
 旦那様が、大変なんです!』



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