危険な愛を抱きしめて
「親父に、何が起きたんだ!?」

 嫌な予感に、町屋を促せば。

 ヤツは、息を飲んだ。

『……坊っちゃん、その声……!』

「なんでもねぇ、ただの風邪だ。
 それより何があった?」

『昨日の昼過ぎごろ、旦那さまが、暴漢に刺されて重体です!
 今、喜代美さまと、お兄様が詰めてます。
 坊っちゃんも早くいらしてください……!」

 
 ……なんだって!

 町谷の言葉に驚いて、今すぐにでも、飛んで帰ろうと、しても、カラダが言うことを聞かねぇ。

 オレは、仕方なく町谷に頼む。

「オレは、今。
 ちょっと風邪をこじらせて、知り合いになったヤツの家にいるんだ。
 悪りぃが迎えをよこしてくれ。
 場所は……」

 ……どこだ、ここは!

 街をさまよった、うろ覚えの記憶と。

 派手な店の外観を町谷に伝えて、電話を切った。

 と。

 今度は、それを待っていたかのようにショコラが、飛びついて来た。

「雪ちゃん、起きた!
 大丈夫!?
 丸一日、眠ってたのよ!
 熱は下がらないし、呼んでも起きないし!
 もし、ここで目が覚めなかったら救急車を呼ぼうと思ってたの!」


< 288 / 368 >

この作品をシェア

pagetop