危険な愛を抱きしめて
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アヤネが嫌々、帰る姿を見送って、何気なく。
自動販売機で買った紅茶を、由香里に投げた直後に。
……間違いに気がついた。
「由香ネェ、悪っ……!」
投げた、小さいサイズの紅茶のペットボトルは。
キレイな弧を描いて、由香里の手の中に収まるハズだったのに。
ぺきょん
と、小さな音を立てて地面に落ちた。
「……信じられねぇ。
今のタイミングだったら、ガキでも取れるよな?
なんで、ヤクザの拳はよけられるのに、コレは、落とすんだ?」
「うるさいわね」
「不器用?」
「よけいなお世話よね!」
字面よりは怒っていない、由香里の口調に肩をすくめて、オレは。
自販機から取り出したばかりの紅茶を由香里に手渡し、落ちたペットボトルを拾った。
「……別に、自分で拾うのに」
「いや。
由香ネェが、ドジなのをすっかり忘れてたオレのミスだから」
莫迦ね、と頬を膨らませる由香里に、オレは、ニヤリと笑った。