危険な愛を抱きしめて

_(2)

 





 アヤネが嫌々、帰る姿を見送って、何気なく。

 自動販売機で買った紅茶を、由香里に投げた直後に。

 ……間違いに気がついた。

「由香ネェ、悪っ……!」

 投げた、小さいサイズの紅茶のペットボトルは。

 キレイな弧を描いて、由香里の手の中に収まるハズだったのに。




 ぺきょん




 と、小さな音を立てて地面に落ちた。

「……信じられねぇ。
 今のタイミングだったら、ガキでも取れるよな?
 なんで、ヤクザの拳はよけられるのに、コレは、落とすんだ?」

「うるさいわね」

「不器用?」

「よけいなお世話よね!」

 字面よりは怒っていない、由香里の口調に肩をすくめて、オレは。

 自販機から取り出したばかりの紅茶を由香里に手渡し、落ちたペットボトルを拾った。

「……別に、自分で拾うのに」

「いや。
 由香ネェが、ドジなのをすっかり忘れてたオレのミスだから」

 莫迦ね、と頬を膨らませる由香里に、オレは、ニヤリと笑った。



 
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