危険な愛を抱きしめて
 



 呆然としているショコラに。

 この礼は、また改めて、と町谷が深々と頭を下げ。

 オレは、ボディ・ガード役らしい黒服と運転手に、半ば抱きかかえられるように、クルマに詰め込まれた。

 高価な総革張りの長椅子に、肉食獣の毛皮を敷いたリムジンの座席に、足を伸ばして寝転ぶと。

 続いて、町谷が、入って来た。

 その顔が、相当、怒っているらしいのが、目に映る。

 町谷は、黒服が助手席に座るのを確認すると、運転手にクルマを出せ、と合図して、オレを睨んだ。

「……どこが『ちょっと風邪をこじらせた』ですか!
 心臓の手術は、上手く行ったとはいえ。
 完全に、普通とは言えないんですよ!
 なのに、こんな……!
 無断で外泊した上に、熱も高いなんて!」

「オレのことはいい!
 親父の様子は、どうなんだ!?」

 まだ続きそうな町谷の説教の腰を折り、一番の気がかりを聞くと。

 それでも、町谷は、眉間にシワを寄せて、答えた。

「旦那様は、九条さまとの商談中に、九条家の旦那様と間違えられて、刺されたようです」

 また、九条家か!

 一体、アヤネの家は、何やってるんだ!
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