危険な愛を抱きしめて
 


 ……愛を。

 男同士の愛を育む趣味は、オレ達には無い。



 ……しかし。

 薬が煽るカラダの疼きを、癒やすように。

 あるいは、かきたてるように。

 薫は舌を使い、本格的にくちづける。

 そのワケは。


 ……いつも。

 薫は。

 口移しで薬をオレに追加するのだ。

『アレクサンド・ライト』という。

 ヒドく習慣性のある薬を。

 飲み物に混ぜるだけでは、足りない。

 オレのカラダを。

 まだ、麻薬と指定されていないのが不思議なくらい強い薬の虜にするために。

 口移しほど、確実に、飲んだコトを確認する方法は無いから。

 恋人なんかでは、もちろんなく。

 幼なじみの『兄』で。

 ヤバい薬の売人の顔を持つ薫は。

 オレに薬を注ぎ入れるためだけに。

 ためらう事なく、いつも、くちづけていた。





 ……しかし……



 
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