危険な愛を抱きしめて
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最後まで心配していた町谷を『眠るから』と追い出し。
風ノ塚に、無断欠勤の詫びの電話を入れると。
自分の部屋に使っている平屋の離れは、やけに静かになった。
障子の隙間から庭園を垣間見れば。
クリスマス・イブに降った雪は、いつの間にか、止んでいたけれど。
溶けずに、未だ白々と残る雪に。
音と言う音が全て、飲み込まれてしまったようだった。
その中で、エアコンの稼動するかすかな音と。
オレ自身が、熱に浮かされて吐く息だけが、辺りの静けさを際立たせていた。
まだ熱の高い、今は。
何も考えずに、眠ることが、最良の策だとわかってはいるものの。
胸が、締め付けられるように痛んで、疲れ過ぎ。
目ばかりが冴えて、ゆっくり休むことができなかった。
この耐え難い、胸痛の原因が。
肺炎になりかけている風邪や、心臓の不具合ばかりでないことを知っているのも、素直に眠れない理由だ。
由香里への愛と病気。
アヤネのこと。
そして、自分の進むべき、未来……
問題は、山ほどあるのに。
上手い解決策なんざ、何一つ思いつきは、しなかったから。