危険な愛を抱きしめて
 入院先から、年末の外泊が許されたような由香里が。

 こんな風に、もう、そんなに立っていることさえも、できない彼女が。

 何かのついでに来られるはずなんて、なかった。

「一人で来たのか?
 ……薫は……?」

 口に出すと、どうしても硬くなるヤツの名を。

 なるべく何でもないように、言ったのに。

「一人で来た」という由香里の声に、思わずほっと、ため息が出た。

 そんなオレに、彼女は、心配そうに首をかしげる。

「……雪。
 クリスマス・イブの夜。
 ウチの兄貴と、何かあった……?」






 ……ぎくり。







 由香里の質問に。

 熱に浮かされたはずの、カラダが凍る。

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