危険な愛を抱きしめて
「オレの方から、家族に内緒でこっそり。
 資金援助は、出来るか?」

「……家族の方が、病院関係者である以上。
 秘密に援助なんて、難しいですね」

「……」

「それに、後々トラブルになるので、こちらからも。
 あなたから直接お金は、受け取れません。
 特に、金銭は。
 税金関係など、法律にに関係することが多いので、厳しいです。
 もし、本気で援助をしたいのならば。
 家族の方と良く話しあってください」

「……!」

 つまり。

 由香里の未来は、全て。

 薫が、握っているということだった。

 しかも、明日。

『治癒(ちゆ)が期待できないから。金がないから、やめた』といっても、許される。

 世間も納得で、治療を止められる立場に薫はいる、ということだったんだ。

 前に、家庭教師として来た時に。

 売るものが、何も無いのに金を貰うことが、一番キライだと言っていた薫が。

 金を、由香里への手切れ金と疑う薫が。

 素直に、黙ってオレからの援助金を受け入れるとも、考えられなかった。






 ……だったら。

 オレが出来ることなんて。





 たった一つしか、無いじゃないか。

 
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