危険な愛を抱きしめて
「あら、色男が、水を滴らせちゃって。
 まあ」

 だいぶのんきな、その声に。

 ぎらり、と殺気だった顔で、振り返ると。

 そこに、ショコラがいた。

「……オーナー」

「ん、もう。
 そんな怖い声を出さないの!
 それに。
 誰もいない時は、ショコラちゃんと、呼んでって言ってるでしょう?」

「……賢司」

「やあねぇ……
 雪ちゃんは、何を怒ってるの?」

 ……何に、怒っているか、だって!?

 ショコラの言葉に、キレそうになりながら。

 オレは、低い声を出した。

「あんたは、すぐオレに客がついて、金が稼げるって言ったのに!
 なんだよ、これは!」

「あら、あらら。
 自分の力不足をヒトのせいにして、怒っていたのね?
 雪ちゃんって、本当に、子供みたいでかっわいい♪」

「ふざけるな!
 オレは、一刻も早く。
 なるべく多くの金を稼がないといけないのに!
 こんなところで、水をかけられて、遊んでいる場合じゃないんだ!」

 オレが怒鳴ると、ショコラは、片方の眉毛を、くぃ、と上げた。

「そんなこと、知ってるわ。
 だけど、間違えないでね?
 ここに来るお客様は、夢を買いに、遊びに来るのよ」
 
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