危険な愛を抱きしめて
「あまり短気を起こさずに、もう少し頑張ってみるといいわよ。
 ここに来て一カ月。
 やり方に慣れても、新人君なんだから。
 私も、指名客のヘルプばかりじゃなく、御新規さんをもっと紫音ちゃんに回してあげる。
 それでも、もし。
 本当にお客様が、紫音ちゃんを指名しない日が、これからも続くのなら。
 私が、雪ちゃんに貢いであげるから」

 風ノ塚のケーキ屋で。

 王子サマゴッコをしている時の方が、まだモテてた気がするが。

 確かに、そのときは、もっと笑ってた。

 せめて、それぐらいから、始めれられれば。

 きっと、オレだって、出来るはず。

 いや。

 やらなくては、いけなかった。

「……客を回してくれれば、自分でやれる。
 貢いでなんて、くれなくてもいい」

 オレの言葉に、ショコラが、嬉しそうに言った。

「それは、とても頼もしいわね」





 そんな風に。

 ショコラから、背中を押されて、まもなくだった。

 オレに、最初の客がついたのは。





 ただし。


 その客は。

 ……オレをさらなる闇突き落とす、とんでもない、ヤツだった。
 

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