危険な愛を抱きしめて
「……音雪さん。
 あなたに、拒否権は、ないと思いますのよ?」

 そう、言って、さやかは、口元だけでほほ笑んだ。

「薬のことを、お父様にお伝えしてもいいんですか?
 もし、それが、罪に。
 村崎家の汚点となると判断されたら。
 あなたはきっと。
 日本に帰ってくるなと、何年も海外へ島流しにあうんじゃありませんか?
 名目上は、留学で」

「……」

「……それに、もし。
 わたくしが退屈しない、遊びでも、教えてくれるのなら。
 ここのホストクラブでは、あなたをわたくしの本指名にしてもいいですわ。
 今まで、音雪さんを指名してくれるヒトは、だれもいなかったのでしょう?
 こういう御商売は、不思議なコトに。
 最初に指名が入らない限り、どんなコでも、切りまわしが大変なのに。
 一度入れば、後から後からお客がつくものですけど」

 言って、さやかは、誘うように、オレを睨んだ。

「その、幸運の最初の指名客を……
 しかも、金払いのいい客をほしいと思わないのですか?
 店の終わった後。
 アフターにでも、抱いていただけるのなら。
 特別ボーナスも、出しますわ」






< 327 / 368 >

この作品をシェア

pagetop