危険な愛を抱きしめて
「あなたはまだ、下手ですからこれくらいですけれど。
 もっと上手いヒトには、倍以上出してますわ。
 相場としては、普通ですから」

 ……よくわからねぇけれど、そうなのか?

 さやかの言葉に、うなづいて。

 オレが、特に断りもせず、自分のセカンドバックに、金の詰まった封筒を入れたのを確認して。

 さやかは、ずるそうに顔を歪めた。

「紫音は、わたくしと、愛人契約を結ぶ気はありませんか?」

「……え?」

「わたくしとしては、あなたが。
 その、あまり上手くないSEXの他に、何か退屈しのぎになることが、出来ることがあるのなら。
 ホストと、そのお客よりも深い関係をこのまま、続けてもいいと考えてますのよ」

「……」

「わたくしに付いていらっしゃれば。
 ホストとしてスキルアップする方法や、もっと女性が喜ぶツボなどを教えて差し上げられますが……」

「結構です。
 これからは時々、ウチの店に飲みに来ていただければ、それで」

 あくまで高飛車な、さやかの提案に。

 吐きそうになるほどの、嫌悪感を抱いて、オレは即答したのに。

 さやかは、目を細めて言った。
 
 


< 331 / 368 >

この作品をシェア

pagetop