危険な愛を抱きしめて
「いいのですか?
 このまま、わたくしの提案をつき放したら……
 あなた、売春の罪に問われることになりますわよ……?」

「……は?」

 売春、だって……!?

「何を言い出すんだ!
 まさか、女じゃあるまいし!」

 動揺し、思わず怒鳴るオレに、さやかは嗤う。

「あら。
 性交渉に、金銭が絡めば。
 相手が、男でも、女でも、売春行為に相当するそうですわ。
 自由恋愛は、認められているので『愛人関係』ならばイイのですが。
 このまま、わたくしの提案を受け入れずにいれば。
 あなたは、ご立派な売春『夫』ですわね」

「莫迦な!
 そんなことをしたら、あんただって、ただでは済まないはずだろう!?」

 オレの言葉に、さやかは、片目をつむった。

「わたくしが、一番嫌うのは、退屈なこと、ですわ。
 それは、夫も良く知っていることですし。
 面倒事が起これば、お金で解決してくれるでしょう?
 だけども、あなたは。
 ご家族に知られたら、相当いけない立場に陥るのでは、なくって……?」

「て……め……!」

 さやかに、つかみ掛かりたいキモチを何とか抑えて、呻けば。

 さやかは、ころころと笑って、言いやがった。

「さあ、紫音。
 あなたは、何をして、わたくしの退屈を紛らわせてくれるの?」
 


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