危険な愛を抱きしめて
「なあに?
 じゃあ、紫音は。
 あたしを、名目上の経営者にして。
 いろんな所の風よけに使おうっていうの……?」

「……ミもフタもなく……言えば……そうだ。
 で……?
 どうする……?」

 オレの言葉に、薫は。

 少しだけ、呆れたようにため息をついた。

 
「……受けるわ。
 その話。
 もし、紫音が……あたしのコトが嫌じゃなかったら、ね」

 正直なところ。

 薬を飲ませて、狂わせ。

 その気になったら、力ずくでオレを束縛できる薫が。

 まったく怖くないわけではない。

 だけども。

 そうしなくてはいけなかった理由は、十分すぎるほどに承知だったし。

 一緒に、同じ目標のために戦ってきた……

 ……みたいな奇妙な連帯感は、すでにあったから。

「別に……薫のことは……嫌じゃない」

 そう紡ぐ言葉に、ウソはなく……

 薫も、ほっとしたように笑った。
 

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