危険な愛を抱きしめて
「明るそうな未来(さき)が見えてきそうで、何よりだわ。
 あたし、実刑が降りてもやけを起こさずに。
 真面目に罪を償ってくるから……
 紫音は、その、ホスト・クラブの名前でも考えて、待っててね」

 薫の言葉に、オレは、そっとほほ笑んだ。

「クラブの名前は……もう……
 ……決めてあるんだ」

「ふーん?
 何ていう、名前?」

「……ダーク・クラウン」

「暗い、王冠?」

「いいや……道化師、の方。
 由香里に……張り付いた死神に。
 散々……踊らされたオレ達には……ぴったりな名前だろう?
 それから……もうひとつ。
 これから先……
 どんなに暗い……困難なコトが起こっても……笑って進んでいけるように」

『事情』があるのは、何も、オレ達ばかりじゃなく。

 悲壮感を背負ったままにせずに。

 笑って前に進め、とオレの背中を押してくれたのは、ショコラだった。

 オレの言葉に、薫は、そっと、ほほ笑んだ。

「……そうね。
 とても、いい名前ね……」








 

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