危険な愛を抱きしめて
「………く……ふ……
 ……は……
 薫こそ……今日はもう……薬を飲ませない……のか……?」



 薫は、長く。

 まるで、女を犯すように、舌を口の中で這わせていたのに。

 今日は。

 薬をオレの喉に滑りこますコトは無く。

 薫は、細い銀の糸を引く、くちづけをやめて言った。



「……もう、いいんだ。
 俺が、お前に。
 くちづける事は……
 ……今夜限りで、二度と、無い」

「……か……おる……?」

 薬の熱に浮かされて。

 かすれる、オレの声に頷いて、薫は、言葉を重ねた。

「由香里の葬式が終わった、今日から先。
 もう。
 金の為に、お前を薬づけにする意味がなくなった。
 お前からアレックスの代金として、請求していた金は。
 全部、由香里の治療費だったんだ」

「……知って……たよ」

 ああ。

 だから、オレは。

 薫に誘われるままに。

 ヤバい薬を黙って、飲むつもりでいたんだ。

 だけど。

「……今まで。
 あんたのくちづけに……抵抗していたのは……
 さめると辛い……
 強烈な寒気が襲ってくる薬を飲む事に……カラダが反射的に拒否ったから……」


 ……そして。



 
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