危険な愛を抱きしめて
「薫、じゃない。
 篠原先生、と呼べ。
 俺は、今日からお前の家庭教師になったんだ」

「げ」

 ……今度の相手は、コイツか。

 だから、由香里は。

 今日オレのところに、新しい家庭教師が来る事を知っていたんだ。

 やりにくいぞ……これは。

 さすがに。

 下手なコトをしたら、由香里の拳が飛んで来そうだ。

 でも。

 どんな相手だろうが。

 少しばかり由香里が怖かろうが。

 譲れないコトは、あるんだ。

「……で。
 薫は、オレに、何を教えてくれるんだ?」

「相変わらず、口のきき方に問題あるヤツだな。
 仮にも、年上なんだから、少しは敬え。」

 薫は、笑って、肩をすくめた。

「俺が、お前に教えること?
 全部だよ。
 お前が得意な拳法以外の全教科。
 びしびしやるから、覚悟しておけよ?」

「……拳法、じゃねぇ。
 オレがやっていたのは、古武術だ。
 それに、オレは、相当優秀なヤツじゃないと認めねぇぜ?」

 自分でも生意気だと思うセリフに、薫は、また明るく笑った。


「……俺は、国立大の医学部首席だぞ?
 そこらの学生と同じように思って貰ったら困る」
 

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