危険な愛を抱きしめて
「……お前さ。
少しでいいから。
考えるフリぐらいしてみないか?」
「……無駄なコトは嫌いだ」
ただ、オレは。
『力試し』とやらの。
手渡された問題用紙の答えを、機械的に求めているだけなのに。
薫は出来上がった答案の束を見て。
げっそりしたように、言った。
「英語は、既に完璧。
ドイツ語もOK。
シャレで持ってきたフランス語も解けてる……
数学に至っては……
なぁ。
今すぐ大学行って、俺と首席争いが出来るぞ?
お前も将来、医者にでもなれ」
「興味ねぇな」
「……参ったな」
薫は、がしがしと頭を掻いた。
「デキが良いってコトは聞いてたけど、ここまでだとは思ってなかったぞ。
はっきり言って音雪。
お前の面倒は、学生じゃみられない。
コレでも十分だと思うが、更に上に行くなら。
もっと偉い、教授かなんかを……」
薫のセリフを、オレは、うんざりと遮った。
「あんたの前の家庭教師(ヤツ)10人ぐらいは。
なんだか、偉そうな肩書きを持ったじじぃとばばぁだったな……」