危険な愛を抱きしめて
 こんなヤツらだと。

 オレが放り出した、歴代の家庭教師のリストを眺めて。

 薫は、唸った。

「……また、こんな大勢……
 しかも、全員、一流とか言われる教授ばかりじゃないか……!?」

 薫の言い種に、オレは、肩をすくめた。

「そうか?
 案外無能だったぞ?」

「……もしかして。
 俺が今、ここに居るってことは……」

「全員……」

 オレの握った拳の親指が、下を向いて、振られているのを見て。

 薫は、本格的にため息をついた。

「すごく、バイト代の良い、家庭教師だったけど……
 俺も帰ろうかな?」

 俺は、お前に教えられることは何も無いし、と薫は苦く笑って言った。

「本当は、お前。
 日本じゃもう、狭いんじゃないか?
 留学でも何でもして、自分の才能を活かせばいいのに」

「……海外か……
 それは、ないな。
 ……なにしろ。
 親父が俺に、家庭教師なんざ、つける本当の理由は、別に。
 俺の成績を上げるためじゃねぇから……」

「……なんだ、それ?」

 首を傾げる薫に、今度は俺のほうが、苦く笑った。
 

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