危険な愛を抱きしめて
 
 男達のひとりは、出入り口をふさぐように、オレに近づくと。

 知性の欠片もない猿の顔をして、ささやいた。

「今度は、さっきの人数の倍だ。
 しかも、あの凶暴なネェちゃんもいねぇ。
 お前がいかに強かろうが、コレだけの数がいるんだ。
 たっぷり可愛がってやるから、覚悟しろよ?」

 凶暴なネェちゃん!

 由香里が聞いたら間違いなく、シメられるな。

 オレは、嘲って薫を紹介した。

「……残念だったな。
 このデカイ奴は、その『凶暴なネェちゃん』の兄貴だぜ?」

「……げ」

 オレが、目を細めて言うと、男は、明らかにたじろいだ。

 よっぽど、由香里にやられたコトが嫌だったらしい。

「……また、由香里が何かしでかしたのか?」

 ただならぬ気配に、隣で聞いていた薫が眉間にシワを寄せた。

「トラブルはいつものコトじゃないのか?
 最近は、知らねえけどな」

「……アイツは、子供の時から変わってないな。
 あれで、本当に女かと時々思う。
 短気で、無鉄砲で。
 後先の事をちっとも考えない。
 ……で。
 いつもオレの所にとばっちりが来る。
 いつになったら女らしくなってくれるんだか」

 油断なく、男達の出方を見ながら、薫がため息をついた。
 

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