危険な愛を抱きしめて
……薫に、そこまで言われる由香里は一体。
顔面にパンチを食らった男達の言い草は、ともかく。
血を分けた兄貴の言い草にしては、言いすぎだ。
オレはなんだか由香里が、かわいそうになって来た。
「由香ネェは、女らしいと思うぜ。
ムネはネェけど、良く見れば美人だし。
優しいし。
だいたいこの騒ぎだって、もともとは。
オレの友達のアヤネを助けようとしたからだし……」
「普通、女の子が大勢の男に絡まれたら。
逃げるか、誰か助けを呼びに行くか、のどちらかだろうが。
間違っても、自分の手では、殴らない」
「……まあ、普通の女は、な」
「で。
結局。
、由香里に中途半端にやられたヤツから、話がでかくなってごたごたが大きくなるんだ。
だからといってまさか。
相手を皆殺しにするわけにもいかないから、仕方がないんだけどな」
薫は鋭い目つきで、物騒な事を強くささやいた。
「おかげで、こんな場面の場数を踏んで、喧嘩慣れしちゃったじゃないか!
これから、医者になろうって言うヤツが。
お前らと違って、拳法も武術も知らんのに、怪我人量産マシーンだ!」
がっ!
不意打ちで伸ばした薫のデカイ手が、側にいた男の一人を吹き飛ばした。