危険な愛を抱きしめて
大の男は。
がしゃがしゃがしゃんっと球を蹴散らし、派手な音を立てて、ビリヤード台に乗り上げた。
「おお、すげー」
やっぱ、デカイだけあって力も相当ある。
思わず口笛を吹いたら、薫にぐぃと腕を掴まれた。
「ぼーっとしてんな!
逃げるぜ音雪!」
逃げる!?
走るのか!
冗談じゃない!!
「嫌だ!
走って汗だくになるくらいだったら、こいつらまとめて殴り倒した方が手っ取り早い!」
「莫迦!
こういうやからは、何も素手で来るとは限らないんだよ!
自分の力を過信するな!
行くぜ!」
薫は、話も聞かずに、オレの腕を引っ張った。
「!
だから、嫌なんだって!
こんな! カッコ悪いことは!」
「問答無用」
騒ぎを聞きつけ、すぐにやってきた警備員達がいたが……
……男達が。
その警備員にナイフを突きつけるのを見て、薫は迷わなかった。
薫はオレの手を取ると、外に向かってかけ出した。