危険な愛を抱きしめて
 
 ……もし、オレが。

 由香里が飛んで行かないように、抱きしめ返してしまったら。

 壊れてしまいそうな、華奢なカラダだった。

 なのに。

 本気を出せば、重い大人でさえ、ひっくり返せるだけの力を持っていた。

 そんな由香里が。

 小柄で細いカラダとココロの全部を使って、オレを暖かく、強く、優しく包もうとしているのを感じる。

「……雪」

 涙で濡れた。

 オレを見上げる視線が、どうして? と訴える。

 ………わかったよ。

 オレの負けだ。

 とうとう、オレは。

 ため息と一緒に言葉を吐き出した。






 


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