危険な愛を抱きしめて
「………!」
由香里は。
両目に、涙の粒をため……あふれさせると。
オレの胸を叩いた。
一撃で、相手の目を回すことの出来るような、必殺の拳ではなく。
ぽかぽかと、まるで。
普通の女の子が、叩くように。
「……まだ半分、あるんじゃない」
「なんだよ!」
「まだ、可能性が、半分もあるんじゃない!!
どんなにがんばったって、全く望みのないヒトだっているのに!
ちゃんと治る可能性を、捨てるなんて雪は、贅沢で、わがままよ!」
「「由香里!!」」
涙でぐしゃぐしゃになった由香里の叫びを止める声が、重なった。
オレと。
そして。
「……叔父さん……」
由香里が、病室に入って来た人影に呟いた。
そう。
由香里と薫の保護者であるその叔父が。
この部屋に入ってきたのだった。