危険な愛を抱きしめて
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どうして、この時。
目が覚めてしまったんだろう。
夜中、ぐっすり眠れるようにと、医者から睡眠薬を手渡されたのに。
夕方、町谷が着替えと一緒に持ってきた、バラの香りに誘われるように。
また、病室から差し込む蒼い月に照らされて。
朝まで開かないはずだったオレの目が、開いた。
……目覚めた……
「……水……」
咽が、とても渇いていた。
電気もつけずに、ペットボトルのありかを探っていると、かすかな音が聞こえたような気がして首をかしげた。
夜中、看護師や、医師が起きているナース・ステーションのある廊下側ではない。
……庭のほうから聞こえる。
……かすかな。
たぶん。
歌声が。