危険な愛を抱きしめて
「あれ?
……雪?」
みろ。
あんたたちが、俺のことを変に気にするから、気づかれたじゃねぇか。
ウェトレスをやっているわけでもない、バイト中の由香里に。
厨房って言うのか?
ケーキを作る作業台が見える場所に陣取りはしたものの。
一番隅の方に、いたのに。
奥から出てきた由香里は、オレに気がついて、びっくりした顔をした。
ショウ・ウィンドゥに追加するらしい。
……出来上がったトレイ一杯のケーキを持ったまま。
「うわ、由香里。
そのまま、ぼーっとしてんなよ!
トレイがナナメだ!
ケーキが、落ちる……!」
「きゃーっ!」
落ちそうになったケーキを救おうと。
由香里は、トレイを反対に傾けすぎて、ケーキが面白いようにトレイの上を滑りまくった。
オレは、由香里のピンチに、助けに行こうと立ち上がったものの。
いかんせん、カウンターの向こうの出来事で手が届くはずもなく。
ケーキは、落ちて砕ける……かと思った。
……そのとき。