そら
*
音璃亜から連絡が来たのは、3月の末のことだった。
お世話になった先生方の離任式。
卒業式を終えた私に、チャンスが巡ってきた。
一緒に行こうと誘われて、
私は飛び上がるほどに喜んだ。
だって、彼女には他にも沢山仲のいい子がいたのに、
私を忘れないでいてくれていたんだって思うと、
喜ばずにはいられないじゃない?
久しぶりの再会をした彼女は、
相変わらず綺麗で、
とても格好よくて、可愛かった。
2人だけで、音楽室へと向かう。
古びた壊れかけのピアノに座って音を鳴らすと、
音璃亜は言った。
「ねえ、何か弾いて」
何か。
何を弾こうか。
私はぱっと頭に浮かんだ曲を弾き始めた。
これは、恋の歌。
失恋の歌。
忘れようと無理にでも努めるけれど、
あなたと過ごした時間があまりにも楽しくて、
あの日々をあまりにも鮮明に思い出されてしまうから、
どうしたって消えないよ。
寂しいよ。もう会えないの?
もしそうであっても、
私はあなたと出会えて幸せだったことだけは伝えたい。
出会わなければよかったなんて、
思わない。
ありがとう。ありがとう。
沢山の幸せをありがとう。
そんな、淡く切ない恋の歌。