そら







音璃亜から連絡が来たのは、3月の末のことだった。


お世話になった先生方の離任式。


卒業式を終えた私に、チャンスが巡ってきた。


一緒に行こうと誘われて、
私は飛び上がるほどに喜んだ。


だって、彼女には他にも沢山仲のいい子がいたのに、
私を忘れないでいてくれていたんだって思うと、
喜ばずにはいられないじゃない?


久しぶりの再会をした彼女は、
相変わらず綺麗で、

とても格好よくて、可愛かった。



2人だけで、音楽室へと向かう。


古びた壊れかけのピアノに座って音を鳴らすと、
音璃亜は言った。



「ねえ、何か弾いて」



何か。


何を弾こうか。


私はぱっと頭に浮かんだ曲を弾き始めた。





これは、恋の歌。


失恋の歌。





忘れようと無理にでも努めるけれど、
あなたと過ごした時間があまりにも楽しくて、


あの日々をあまりにも鮮明に思い出されてしまうから、
どうしたって消えないよ。



寂しいよ。もう会えないの?



もしそうであっても、
私はあなたと出会えて幸せだったことだけは伝えたい。


出会わなければよかったなんて、
思わない。



ありがとう。ありがとう。



沢山の幸せをありがとう。





そんな、淡く切ない恋の歌。



< 11 / 17 >

この作品をシェア

pagetop