そら



世界が広がる。


このつまらなくも悲しい独りぼっちな私の世界が、
一瞬で色づく。


紙の上で踊る、
私の空想の世界。


もしも私が人気者だったなら。


こんな恋をしたなら。


いつも登下校の道で見かけるあの犬が、
この学校の生徒なら。


そんなふうに思いを巡らせては、
文字にして、物語にして、私は綴っていた。


凄く暗くて、
一人で何してんのって思うでしょ?


でもこの時間が一番、大好きだった。


私の中の、もう1人の私。


それは私であり、私ではない存在。


片翼の、私の相棒。


私だけでは飛べないし、
私の中の私だけでも飛べやしない。



2つが揃って、成り立つの。


私って、そんな人。



だけど私の中の私を、
人には知られたくない。


だって、バカにされるもの。


頭おかしいだろって、言われちゃうもの。






「ねぇ、何書いてるの?」


いつの間にかHRが終わってしまっていて、
気がつくと私の目の前には
話したことも無いクラスメートが立っていた。




咄嗟に腕でルーズリーフを隠して愛想笑いを返す。









ほら。



一瞬で壊れた。


私の中の彩る世界が、
一瞬でモノクロへと変わっていく。



私はこの世界が大嫌いだ。



このクラスが大嫌いだった。



この狭い教室が、嫌だった。



嘘の友情で塗り固められていたこの空間が、
大嫌いだった。





< 3 / 17 >

この作品をシェア

pagetop