そら






「何を書いてるの?」




ふいに背中からかけられた声。


私はびっくりして慌てて後ろを振り返った。


あ、この感じ。


去年初めて会った時とそっくり。


いつだって、この子は私に声をかけてくれる。


あの時も、今までも、
そうして今まさにこの瞬間も。


何でかな。


つい口が滑ったって言うのかな?


ううん。違う。


私はきっと、
気付いて欲しかったんじゃないかな?


憧れのこの子に、
本当の私を知って欲しかったんじゃないかな。






「小説を書いてるの」





言ってしまった・・・。


反応を見るのが怖くて、
私は少し俯き加減に前を向いた。


机に広げられたルーズリーフにくしゃっと皺を作る。


これじゃあ、
隠したいのか見て欲しいのかわからないじゃない。


自分自身のためらいの行動に笑えてしまう。


だけど彼女は言ったんだ。


「えっ、すごい!読んでみたい!!」


「え・・・?」



そんな明るい声に思わず目を丸くして、
私は彼女を見た。


好奇心旺盛な彼女のわくわくとした瞳が揺れる。


そんな強い目に引き込まれるように、
私は少しよれてしまった紙の束を彼女に手渡した。



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