そら
☆
「何を書いてるの?」
ふいに背中からかけられた声。
私はびっくりして慌てて後ろを振り返った。
あ、この感じ。
去年初めて会った時とそっくり。
いつだって、この子は私に声をかけてくれる。
あの時も、今までも、
そうして今まさにこの瞬間も。
何でかな。
つい口が滑ったって言うのかな?
ううん。違う。
私はきっと、
気付いて欲しかったんじゃないかな?
憧れのこの子に、
本当の私を知って欲しかったんじゃないかな。
「小説を書いてるの」
言ってしまった・・・。
反応を見るのが怖くて、
私は少し俯き加減に前を向いた。
机に広げられたルーズリーフにくしゃっと皺を作る。
これじゃあ、
隠したいのか見て欲しいのかわからないじゃない。
自分自身のためらいの行動に笑えてしまう。
だけど彼女は言ったんだ。
「えっ、すごい!読んでみたい!!」
「え・・・?」
そんな明るい声に思わず目を丸くして、
私は彼女を見た。
好奇心旺盛な彼女のわくわくとした瞳が揺れる。
そんな強い目に引き込まれるように、
私は少しよれてしまった紙の束を彼女に手渡した。