私は先輩の浮気相手。
「っ……」
唯を掴んだのはいいけれど、もう腕が引きちぎれそうだ。
それにまだ動いている。
トンネルが見えてきた。
ぐっと手に力を込めて、何とか唯を引き上げた。
「ゆ、い……大丈夫…?」
慌てて駆け寄る大人たちを無視して、唯を見る。
俺の視界に広がった赤いものは、すぐに何かは分からなかった。
「唯……?」
「……だい、じょうぶ…、とうま…助けてくれたでしょ…」
「おい!冬真、どうしたんだよっ!」