鈴木くんと彼女の不思議な関係
体育館で活動していた演劇部に顔を出すと、通し稽古を見せてもらうことができた。あの後も演劇部ではいろんな人間関係の変化があったようだ。川村の抜けた裏方は既に一年が主導権を握っているらしく、多恵はすっかりOGみたいな顔をしていた。神井とは山あり谷ありながらも、微笑ましい交際を続けている様子だ。そうだよな。俺が引退してからもう一年が経ったのだ。
帰り道、なんとなく別れ難くて、俺と清水は2人で学校近くの遊歩道を歩いていた。
「これでお前ともお別れだな。」
「そうね。帰省したら、たまには声かけてよ。」
「気が向いたらな。」
これが最後になる可能性だってあることも、多分、お互い分かっている。この心地よい関係を、なんとかして続けたい気持ちももちろんある。だが、流れる時間に目を閉じて、温かな今にしがみつけば、後悔しか残らないということも、俺はここで学んだ。俺達は踏み出さなければならない。
何か伝えておかなければならない事があるような気もするし、そうでもないような気もする。