鈴木くんと彼女の不思議な関係
「私達って、何だったのかしら?」
「仲間だろ。お前がそう言ったじゃないか。」
「最初にそう言ったのは、鈴木でしょ。覚えてないの?」
「そうだったっけ?」
一瞬灯る口火は、すぐに消えてしまう。そんな会話を繰り返しながら、とくに行くあてもない。水路に沿って作られた遊歩道をゆっくりと歩く。くるりと学校の周りを一周して、校門がまた近づいて来た。生け垣に、微妙な隙間を見つけた俺は、心の中で温めていた言葉を口にする。
「キスとか、しとく?お互い合意でしたことないだろ。」
「そうね。最後に一回。ちゃんとしとこうか。」
俺は清水に手を差し出した。清水はその手に自分の手を重ねた。手を引いて植え込みの隙間から物陰に導くと、彼女は素直についてきた。そのまま引き寄せ、お互いの顔を見つめ合う。あの日、舞台の上で見つめ合ったときのように。