鈴木くんと彼女の不思議な関係
俺達はまた歩き出した。木々の間から、母校の校舎が近づいて来る。母校の窓に目を向けたまま、彼女が言った。
「私、女優になるから。いつか見に来てよ。」
「もちろんだ。行くよ。必ず。」
俺達は既にこの学校を卒業した。だからと言って、そこで過ごした日々が消えるわけではない。俺達の仲間としての時間は、俺達の中に確かに積み上がっている。この身体と心で、俺達はそれぞれの道へ旅立つ。今はそれでいいと思う。
いつかまた、俺達の道が交わる事があるとしたら、その時は多分、俺達は、仲間ではなく、男と女として出会うのだろう。
校門の前で、清水が立ち止まった。
「ここで別れましょう。」
「わかった。」
「じゃあ、またね。」
俺が無言で頷くと、清水は女優の顔になって、にっこりと微笑んでから、俺に背を向けて歩き出した。背筋を伸ばしたその美しい背中を目に焼き付けたくて、俺はいつまでもそこに立っていた。
鈴木くんと彼女の不思議な関係 ーおわりー