鈴木くんと彼女の不思議な関係

 部室を覗き込んだ俺の目に飛び込んで来たのは、3月の青い空を切り取った窓を背景に抱き合う2人。怒りと失望で、全身の毛が逆立つ。これは一体何の冗談だ?
 お前等、俺が来るって知ってるハズだろ。こんなところでドア全開で何やってんだよ。

「先輩ですか?」
突然、川村が俺を呼んだ。
「来て下さい。居室です。」

呼ばれて、何がなんだか分からないまま、俺はフラフラと前進し、居室に入室した。
よく見ると、多恵は川村の背中に抱きつくようにしているが、川村は後ろを向いている。

「先輩。」
多恵が涙の浮かんだ目を俺に向ける。
「どうした?何をしてるんだ?」
「先輩、大野さんを動かないように押さえてて。」

何がなんだかわからないが、涙目の多恵の様子が気になって、傍に寄ると、多恵が俺の腕を掴んだ。
「多恵、どうした?」
尋ねたが、多恵は紅い顔を歪ませるばかりで声が出ない。

「壁を運んでたら、棘が出てて、指にささったんです。」
後ろを向いたまま答える川村は、多恵の右手を抱え込んで窓際へ置いている。
「ここ、この手首の所。押さえててください。動かないように。」
「抜くのか?」
「はい。」

< 21 / 120 >

この作品をシェア

pagetop