鈴木くんと彼女の不思議な関係

「んっ。」
川村が指先に触れると、多恵がビクリと躯を震わせて、俺にしがみつく。2人がそれぞれ躯を強ばらせて息を詰めた。俺も一緒になって息を詰める。

「んあっ。くぅっ。」
多恵の左手が俺の制服を掴む。相当痛むのか、思わず右腕を引き抜こうと暴れる。川村が腕を掴む手を緩め、こちらを向いた。多恵ははぁはぁと息を切らせて、目に涙を滲ませている。

「大野さん、やっぱり無理だよ。」
「そんなに痛いのか?」
「痛いですよ。爪の先だもの。指先は神経が集まってるから。拷問するとき、ここやるの。知りませんか?」
拷問?!

「保健室だったら、もっといい道具というか、やり方があるんじゃないか。」
「保健室は開いていませんでした。今日土曜だし。今日の活動、届けてないから顧問もいないし。ってか無許可で活動して、怪我したなんてバレたら、ややこしいことになります。」
「そうか。。」

「怪我自体は大した事ないし、道具もあるから、抜いちゃえば、楽になると思うんだけど。。。大野さん、やっぱり医者に行こうよ。時間かかるけど、麻酔して抜いてもらえるよ。」
「土曜の午後は医者もやってないんじゃないか?』
「ですね。救急は市民病院かな。父さんとこ電話してみようか?誰かいる筈だから。」
 そういえば川村の父親は開業医だ。でも。産婦人科って、怪我の治療もできるのか?

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