鈴木くんと彼女の不思議な関係

「鈴木、ちょっといい?」
 昼休み、机の上に弁当を広げていたら、学年で、いやおそらく校内でもダントツの美人が、俺の席へやって来た。仁王立ちになって、俺を睨んでいる。

「あんた昨日、玲奈の呼び出しをすっぽかしたでしょ?」
清水由里は少し押さえた声で、静かに言った。

「は?」
「手紙。下駄箱に入ってたんでしょ?」
あぁ。あれか。俺はとたんに不機嫌になる。

 演劇部の看板女優だった清水由里とは3年になって初めて同じクラスになった。部活では、それなりに協力したり、議論したり、俺の片思いに関して余計なアドバイスをされたりと、まあ親しかったと言って良い。多恵にフラレた夜には電話で愚痴を聞いてもらった。だがそれだけだ。

 清水はその辺ではちょっとお目にかかれない程の美人だ。なのに姉御肌でさっぱりした性格なものだから、男のファンは言うまでもなく、女のファンや取り巻きがやたらいる。レナとかいう女子も、多分、取り巻きの一人だろう。その子が俺を気にしているということも、何度か聞いた事はある。だが、今の俺は女に興味は無い。だいたいそいつだって同じ受験生だろ。

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