鈴木くんと彼女の不思議な関係

「あの子、ずっと待ってたのよ。なんですっぽかしたりするのよ。」
「俺にだって都合があるだろ。いきなり場所と日時だけ指定した手紙で呼び出されても、行かねえよ。普通。」

 手紙には体育館の裏へ来てくれと、一方的に日時が書かれていた。文面からだいたいの察しはついたものの、用件についても何も書かれていなかった。差出人名は何故かローマ字。学年もクラスも書いてなかった。なんでそんな失礼な手紙のために放課後の予定を調整する必要があるのか分からない。

「だったら事前に断るとか、代理立てるとか、できるでしょうが。」
「断ろうにもクラスも顔も知らねぇし。それに、行ってみたら、怖い男が集団で出て来てリンチとかされたらどうすんだよ。」

 せめて清水に言っておけば良かったと、気付いたけれど後の祭りだった。いや、下駄箱に手紙などまどろっこしい事をせずに、清水が直接俺に言伝てくれれば、その場で断る事ができたのに。

 それでも、相手のクラスに出向いて行って、『手紙の件ですが、君には興味が無いし、都合が悪いから行かれません』と、その場で説明しないくらいの配慮は俺にもあったんだ。

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