鈴木くんと彼女の不思議な関係

 茫然と立ち尽くしていた鈴木の目が赤く潤みはじめる。不意に鈴木は目を逸らして、そばにあった植え込みの淵に腰かけた。深呼吸を繰り返し、なんとか自分を落ち着かせようとしている。

 小さい頃から口喧嘩をして男子を泣かしてしまった事は何度もあった。女に泣かされる弱い男子が悪いのだと思っていた。でも、、こんなのは、、ただのいじめだ。

「わかった。もう多恵には近づかない。」
鈴木は軋んだ声を絞り出すと、そのまま俯いていた。肩が小刻みに震えている。

 私はどうしたらいいのか分からず、そのまま鈴木の傍に無言で立っていた。なんと言葉をかければ良いのか。いや、その前に謝るべきかもしれない。

 グラウンドでは、野球部員達がグラウンド整備を始めた。下校する生徒も一段落し、校内が放課後の顔になる。私達だけが校庭の隅で時間を止めていた。

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