鈴木くんと彼女の不思議な関係

 いつのまにか日陰が広がり、一陣の風が私達の間を吹き抜けた。
「お前、帰らなくていいのか?」
驚く程さっぱりとした声で、鈴木は言った。
「ごめん。言い過ぎた。悪いのはあんたじゃないのに。」
「いや、うん。。」
「ごめん。」
「いや、、本当は俺も気付いてたんだ。怪我の事じゃなくて。」
「。。。。。。」

「多恵が、あのままじゃマズいってことは、俺も分かってたんだ。人見知りで、憎まれ口叩いて、とっつきにくいのに、少し親しくなると、今度は全身でぶつかって来る。警戒心がなさすぎて。でも、、そこが可愛くて。」

「わかるよ。私にもそうだから。」
「だから、壊したくなかったんだ。」
「バカだったねぇ。」

 でも、みんなそうだった。あの子はあのままでいて欲しいと私も思っていた。川村が多恵を想いながら、距離を縮めないのも、鈴木が多恵を子供扱いし続けたのも、みんな、あの子に無垢なままでいて欲しかったからだ。

< 81 / 120 >

この作品をシェア

pagetop