鈴木くんと彼女の不思議な関係

 ロミオとジュリエットが出会う。遠く離れた舞台の両端で、お互いを見つけ、見つめ合い、そして歩み寄る。ロミオの差し出した手にジュリエットの手が伸び、2人は熱烈に見つめ合いながら踊り始める。やがて兄達がロミオを連れ去る。舞台が暗転するその瞬間まで2人の視線は離れない。

 3分以上の長い間、俺と清水は一度も視線を外さず、ひたすら見つめ合ったまま演技を続ける。俺を見つけて驚いて、幸せな笑顔で近づいて、照れながら手を差し出し、うっとりとした瞳で踊り、必死に俺を求めながら連れ去られる。
 お互い演技だと分かっていても、なんだか妙に切ない気分になる。誰よりも美しい顔だち。こんな風に求められたなら、誰でも一発でKOされてしまうだろう。

 清水は夏休みの間にロングだった髪をバッサリ切ってショートカットにしてきた。ロミオを演じるんだから当然だが、たかがクラスの劇で、大した役者根性だ。
 一方で、俺はどう見えているんだろう。こんな大男が全力でシナを作る様は、やっぱりかなり気持ち悪いのだろうなぁ。なんか、不公平だよなぁ。

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