甘い香りに誘われて【続編 Ⅲ 完結しました】

疑惑…音信不通

翌日から、会社で葵さんをほとんど見かけなくなった。

自席にいることは、まずなくて、何日間か出張してることもあるようだ。

行き先を知ってるのも、営業企画部の杉下部長以上の人たちにしか、把握できてない。

「秘密裏に動くイケメン課長…かぁ」

三奈が芝居掛かった口調で茶化す。

「俺、遅くまで残業してた日に、一瞬だけ宮澤課長を見たわー」

以前の、話しかけるなオーラ全開だったぞと、大樹がため息混じりで言う。

「元気そうな感じだった?」

控えめに尋ねてみる。

ねえ、都…と三奈が

「何も連絡ないの?」

「うん…忙しいみたい」

葵さんとは、うちで鍋を囲んだ翌日から連絡が途絶えた。

メール一つ来ない

『信じてほしい』そう言った。
私をまっすぐ見つめる瞳を信じたい。

「待ってます…葵さん」

小さくつぶやいた声は、社食の陽気な声にかき消された。





< 113 / 159 >

この作品をシェア

pagetop