甘い香りに誘われて【続編 Ⅲ 完結しました】

全てを明らかに

"春の展示会"で、信じられないことに、新人賞をいただいた。

エルが、まとまった休暇が取れたら、ぜひパリの僕のメゾンへおいでと誘ってくれた。

葵さんとは、全く会えないまま二ヶ月が過ぎた。

・・・・・

6月30日 株主総会

本社ビル全体が、朝からピリピリモードだ。

いつも、のほほんとしてる藤枝課長でさえ、こう言ったら失礼だが、キリッとしててかっこよく見えてしまう。

株主総会で、混乱があることも想定し開始時刻前に、課長職以上の役務者は、総会会場の大ホールで待機だ。

「美希子先輩、昨年もこんなんでしたっけ?」

昨年より、警備員の数が多く、残った社員は総会終了まで、部屋の外へ出ないよう注意を呼びかける一斉メールが送信されていた。

「ううん。課長職以上が参加するのは同じなんだけど、形式的な感じで、一時間もかからなかった気がするよ」

「警備も重々しいし、マスコミの数も半端ないよな」

仕事にならないから…と、法人営業部の大樹も、広報室へ遊びに?来ていた。

「やっぱり、あの噂は本当なのかしら。トヨトミとの業務提携…」

いつか、更衣室でどこかの先輩方が噂してたっけ?

「トヨトミ専務の娘と宮澤課長も、けっこう噂になってたな」

隣のグループの男性社員が、思い出したように言う」

「あっ‼︎‼︎」

「な、なに⁉︎ 大樹…突然」

「悪い、何でもないわ〜」

「………」

「………」

もしかして、葵さんの話が出たから、意識を逸らそうとしてくれた?

「ありがとう。大樹、もう大丈夫だよ。
噂に惑わされないし、自分の目で見た事と耳で聞いた事以外は信じないって決めたの」

小声で決意表明してみる。

「そうか…」

と大樹が優しく微笑む。

「ちょっと〜、何そこ!怪し〜い。
松田と都ちゃん、ラブラブな感じ?」

みんなに冷やかされた。

「やば、分かっちゃいました?」

大樹がヘラヘラとかわしてくれた。

(ありがとう。こういう所が大樹だ)









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