甘い香りに誘われて【続編 Ⅲ 完結しました】
(行きましょう。こっちでいいと思うわ)

すっかり元気を取り戻したご婦人に、逆に案内される。

前方の壇上、やっぱり葵さんだ。

(彼…宮澤さんって言うのね。素敵よね〜 あの彼が刷新委員会の委員長に就任したのよ。

気持ち悪かったけど、素敵な人の話してる内容は聞いてたのよ)

ほほほ…とご婦人。

(刷新委員会を発足したということは、うちがトヨトミにテコ入れするってことか…。

だから、葵さんをほとんど見かけなかったのかも。委員長に抜擢されたなら、通常の業務もあるから、相当な忙しさだったんだ)

「葵さん、父は心臓が弱いのよ。倒れたりしたら貴方、どう責任を取るの?」

(あの女性…京都で葵さんの隣にいた人だわ。専務のお嬢さんなの?

しかも"葵さん"て…)

カツン…

葵さんが靴を鳴らして、女性の方を向く。

「山村 響子常務取締役、自分は貴女に名前呼びされるような関係にありません。

以後は苗字で呼んでください。

もっとも、ここにいらっしゃる株主の皆様のご意見を伺い、結果次第では、二度とお会いしませんが」

「………」

「山村専務と弊社の梶浦は毎月のようにゴルフでご一緒してます。
とても、お元気なご様子と伺ってますよ?」

「………」

「どうぞ、ご着席ください。採決を取ります」

葵さんが、ピシャリと言うと、山村 響子さんは静かに着席した。

響子さん…既婚者だったの…。

・・・・・




< 138 / 159 >

この作品をシェア

pagetop