甘い香りに誘われて【続編 Ⅲ 完結しました】
葵さんに続いて三光堂を出る。

葵さんは、そのまま葵さんの後ろを歩こうとしていた私の手を握り、二人並んで歩く。

葵さん、本物だよね?

私…葵さんの隣を歩いてるんだよね?

「………」

葵さんと会えなくて、悲しかった日々

空席の葵さんの席をながめた日々

帰り道、葵さんの姿を探した日々

「……っ」

止めどもなく涙が溢れた。

そんな私に気付いた葵さんが立ち止まる。

繋いでいた手をグイッと引かれ、葵さんの胸に飛び込む形になった私。

ぎゅっ

「都…」

ぎゅうぅ

サルスベリの街路樹の下、私たちはいつまでも抱きしめ合った。

薄紅色の花びらが、葵さんの肩にヒラリと乗った。










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