甘い香りに誘われて【続編 Ⅲ 完結しました】
コツコツコツ…

同じフロアの人の靴音が近づいてくる

「宮澤さん、目立っちゃうので中へどうぞ」取りあえず、家の中へ入ってもらい
狭い玄関で向き合う格好になる。

宮澤さん、笑いを堪えてるし!

(何か言わなきゃ…)

「ご心配かけてしまって、すみませんでした。マナーモードにしたままで、気付きませんでした」

あらためて、ようやく笑いが収まった宮澤さんに頭を下げる

「いや、俺の方こそごめん…その…ゆっくりしてるとこ訪ねてきたりして」

ドテラに視線を感じる。

「あ、これは実家で余ってる生地で祖母が作ってくれたんですよ?」

「そうだ。実家はどこ?林檎を一箱って勝手に言ってしまったけど、電車だと運べないよな?」

まだ何か笑ってるし!気にしないでおこう。

「京都です。明後日、帰るんですけど、他の荷物もあるから、横浜の弟に車で拾ってもらおうと思ってました」

サラッと答える。

「弟さんに頼まなくても大丈夫。俺の車で行けばいい」

何ですと?

「そ、そんなの悪いです!林檎をいただけるだけで嬉しいのに、そのうえ車に乗せていただくなんて」

「ついでだから気にしないで。京都で人に会う約束があるから」

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