甘い香りに誘われて【続編 Ⅲ 完結しました】

健全なんです

1月3日昼過ぎ

「お母さん、帯…手が届かなーい」

「もう、あんたって子は!どんだけ身体硬いの⁈」

お母さんが呆れながら手伝ってくれる

宮澤さんの横に並ぶと思うと、大人っぽく見られたくて無地の訪問着を着ようとしてたら、お母さんに見つかり却下。

「せっかく若いんだから、振り袖にしなさい」

頑として譲らなくて、今に至る。

私の振り袖は、折りの入った生成りの自模様に、大きな芍薬がパッと咲いた柄

肩まである髪を、いつもは下ろしてるけど、今日はアップに結いあげ、着物と同じ芍薬のシルクフラワーをかんざしのように刺してみた。

(おかしくないかな?)

姿見の前で、後ろ姿や襟元をチェックする

午後1時

表の道路に車が止まった気配。

ピンポーン

「きゃっ、きっと宮澤さんよ…はーい」

お母さん、また一段と声が高くなってるな。

「明けましておめでとうございます」

玄関の方で、お母さんに挨拶する宮澤さんの声が聞こえる。

格子戸の向こう側に宮澤さんが立っている。

ショールを羽織り、草履を履く。

あ、宮澤さん…スーツだ。

会社で見るスーツと違って、襟の形やボタンの数に遊び心がある休日仕様?のスーツ。

(何だか新鮮だな)






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