甘い香りに誘われて【続編 Ⅲ 完結しました】
「祇園で向かいますか?」と柴田さんが車を発車させる。

後部座席に、宮澤さんと並んで座る。

程なくして、八坂神社に着く。

赤い鳥居が青空に映える。

年末から続く好天気のせいか、例年より人が多く混雑してるように見える。

祇園駅前でタクシーを下りてから、迷子になると宮澤さんに言われ、ずっと手をつないでる。

お詣りをする人たちの列に並ぶ。

(そういえば、あれから三日間、宮澤さんは何してたんだろ?仕事かな?)

境内が混雑し過ぎないよう、行列が時々止められる。

「京都は、どこか行ったんですか?
いつもより暖かいから、ありがたいですよね〜」

「…まあ、我儘な人に振り回されてた」
少し嫌そうに表情が歪む。

(失言だった?…嫌な事を思い出させてしまったかも)

「ごめんなさい。私は、のほほんと過ごしてました…」

一応、謝ってみる。

そんな私を、目をパチパチとさせてから

「佐久間さんがそんな顔しないで」

つないでる手をぎゅっと握られる。

少し行列が動いた。

「今日、佐久間さんと初詣でに来たかったから、頑張って用事を済ませてきた」

なんて言うから、照れてしまう。

石段を慎重に一段ずつ上がる。

神様に近づく。

「宮澤さん、こんなに渋滞してると、お詣りする時の住所は簡略化した方がいいですよね?」

などと思ったことを口にする。

お賽銭を投げる。

(神様ってすごいな…こんなに人がいっぱいで、誰の願いごとか区別つくのかな?」

うーん

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